ひとつ鍋(こしあん)
鍋の形のモナカ、名前の由来には北海道開拓のエピソード
『ひとつ鍋』という名のお菓子。鍋料理ではなく、六花亭さんの作るモナカです。
忠実な鍋の形の再現。面白いです。私は小さい頃からこの『ひとつ鍋』が好きで、「モナカと言えばひとつ鍋!」といった調子で生きてきました。有名なモナカ、美味しいモナカはたくさんあれど、この形を見ると安心するんです。
しかし、改めてまじまじ見てみると本当に精巧な作りになっています。しかし、なぜ鍋の形なのでしょう?
これには明治16年頃、北海道開拓のために志を持った人々で作られた集まり「晩成社」でのエピソードが由来にあります。開拓を始めた当初はとにかく生活が困難で、食事も本当にひどいものだったようです。そんな様子を共に開拓を志す渡辺勝氏が「豚と同じ鍋の食事をしているようだ」と嘆いたとき、北海道開拓史の祖ともいわれる依田勉三氏が、毅然として「開墾のはじめは豚とひとつ鍋」と詠んだと言われており、この言葉を元に「ひとつ鍋」というモナカが生まれたわけですね。こういったストーリーのあるお菓子って本当に素敵です。
私もいま調べて初めて知ったエピソードですが、逸話の内容とは裏腹にこの「ひとつ鍋」というモナカ、本当に美味しいんです。半分に割ると最中の中には小倉餡とお餅。お餅も2個入っています!贅沢。
あんこの上品な甘さ、お餅のしっかりとした存在感。お菓子の名前のエピソードは食生活の窮乏を嘆く内容だったにもかかわらず、このモナカは非常に贅沢な満足な一品になっています。